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2023年1月16日

SS業界研究

変化のシナリオ

変化のシナリオ

2023年1月4日、日本経済新聞に「EV急速充電器、規制緩和 設置容易に、年内めど 数分で長距離走行も」という記事が掲載された。

日本のEV普及率は2%に対し、中国は25%、ドイツは20%である。ちなみに、人口1万人当たりの公共充電器数が最も多いのは、ノルウェーで35基を超える。日本は2基程度である。
海外でのSSの業態変化は以前もご紹介したが、コンビニが主体で商品の一つがガソリンというモデルになってきている。そもそも日本のSSの収益構造をみると、給油以外のサービスで稼ぐ構造になっている。
これは社会経済という視点でみると自然かもそれない。公共インフラというのは無料か安価であるのが好ましい。ニューヨークの水道が無料のように。日本でも無料Wifiはあちこちにある。インターネットは情報インフラであるので無料であるのは当たり前かもしれない。ネット接続無料の街があっても良い。
内燃機関の車がすぐに無くなるとは思えないが、EVが増えることは間違いないだろう。
そこで今後考えられるSSのサービスについて、いくつかのシナリオを列挙してみよう。

シナリオ➀:2階建て車好きサロン

ベトナムはオートバイだらけであるが、1階は店舗と修理、2階は喫茶という形態がある。
2階はライダーのたまり場になっている。ヤマハ発動機はこの戦略でホンダに対抗し一定の成果をあげたといってよい。 人との出会いはコワーキングスペースでもよい。急速充電を必要としなくても2階で時間を過ごせれば問題はなく、過度な設備投資も必要ない。

シナリオ➁:EV専用タイムシェア

タイムシェアは一定の市場を築いている。近くのパーキングに行って借りるのだが、自転車置き場がない。SSならある程度の駐輪場を用意することができる。常にフル充電の予約したEVに乗ることができる。給油という事業からタイムシェア事業への転換となる。

シナリオ➂:バッテリーの交換所

二輪の充電器交換は既にあるが、EVの場合、バッテリーのリサイクルが課題になる。

シナリオ➃:駐車場

駐車場を借りている人は多い。夜間乗らない人も多い。急速充電をしなくてもいいだろう。駐車中にフル充電されればよい。この場合、SSは駐車場にするにはパフォーマンスがよくないと思われるので駐車場と提携することになる。SSは急速充電に特化する。駐車場経営者が安価になるとはいえ充電設備を何十台も用意することは難しい。充電設備レンタル事業への転換になる。

シナリオ➄:時間回転率

SSは給油機の台数とその回転率が鍵である。しかも、待ちの事業である。そこにビジネスモデルとしての限界がある。24時間のランドリー、食べ物の販売所、消費者金融、ゲームセンターなど多様なサービスがある。夜間診療などの可能性はある。
これら多様なサービスを集合させ、時間制にする。また、登録者のみ使用できる環境にすることでセキュリティも確保できる。夜間、静かに勉強したい学生もいるだろう。多少の建て替えは必要になるかもしれないが、24時間多様なサービス(収益源)を持つことである。

シナリオ➅:地域インフラ

地域にはなくてはならいものといえばコンビニが考えられる。他にはどうだろうか。災害時のバッテリー、水や食料の保管を有した避難所は必要だろうか。
避難所の場所を知っている人は少ないだろうが、SSなら道路沿いにある。
医療設備や薬剤を整えてもよい。普段は時間貸しをしてもよい。粗大ごみの受付や衣服のリサイクルなど24時間対応してくれるとありがたいかもしれない。

他にも様々なアイデアはあるかと思うが、単にEV充電基地になったとしても、水素補給基地になったとしても、既存のビジネスモデルとは変わっておらず低収益構造のままである。DXサービスはないのかという意見もあるかと思うが、利用する人、利用するサービスの種類があって、それらが蓄積される必要がある。利用者増や稼働率が高まることで他業態とのコラボレーションも可能となる。
いずれにしてもビジネスモデルを変化(トランスフォーメーション)させなければ淘汰されることになる。