BLOG
ブログ
2022年3月4日
SS業界研究
新たな需要の創造をコンビニから学ぶ
地域になくてはならない存在
前回、全国のSSの数は2000年には約5.4万店、2020年には2.9万店へ減少しているという話をした。コンビニエンスストアの店舗数が約5.5万店であるので、2000年当時のSSはコンビニと同数程度存在したことになる。
「地域になくてはならないものは何か」と問われたら多くの人が「コンビニ」と言うだろう。郵便局、交番、自転車ショップも大切だがコンビニには勝てないだろう。
災害などの緊急時にはコンビニが地域住民を支えることになる。コンビニで住民証も宅配も洗濯物も受け取れ、公金などの支払いもできる。コンビニは地域の保安・安全の効果もある。空腹も充電も満たしトイレもある。そして24時間である。
需要の創造
コンビニ同様にSSも地域性を戦略の核とするなら、コンビニの苦闘と進化を参考にする必要がある。
コンビニ業界は寡占化が進む中、出店数を増やすというドミナント戦略から転換を図っている。また、チェーンストア理論にある品揃えやサービスの標準化がもたらす脱個性化に対しても本物志向のオリジナル・ブランドの開発で個性化を図っている。
出店数が増えないとすれば単価を上げるか、リピート率を上げるか、売れるアイテムを増やすかである。
例えば、コンビニ・コーヒーは2010年中盤から市場に浸透してきた。気軽に外でコーヒーを飲むという習慣は、今では定着をしているといってよいだろう。だからといってドトールなどの既存のコーヒーチェーン店の売上を奪ったという訳ではない。新たな需要を創造したといえる。
その後、ドーナツを投入するがこれは大失敗となる。そもそも市場規模が小さかったといえる。こうした失敗からの学習は商品開発に活かされている。
今ではシェイクやチキンなどをお目当てに特定のコンビニに行く習慣が見られる。最近では、カカオ豆から指定したBean to Barのチョコレートや一流パティシエのオリジナルスイーツなどが投入され、個性化を図っている。
データの活用
コンビニ業界においてセブンイレブンには一つの大きな特徴がある。それは日商である。競合ブランドより20%多く稼いでいる。顧客が喜ぶ自社商品の開発に力を入れている。
そこでは緻密なデータ戦略がみてとれる。コロナ禍で調理素材として野菜が重視されることを察知し、厳選素材の「顔が見える野菜」を導入。
また、地域性を鑑みて世帯人数が多いエリアにはポテトサラダの大量パックなどを導入した。こうした取り組みの結果、営業利益率は25%を維持し続けている(競合ブランドは10%前後である)。
さて、SSの話に戻そう。店舗数が約半減しているのは、構造的問題だけでなく、需要の創造を怠ってきたからとはいえないだろうか。自動車がモビリティ及び「CASE」へと変化していく中、付き合い方も変化していくはずだ。
だからこそ楽しめる需要の創造は、変化を予測する隠れたデータが教えてくれるかもしれない。