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2022年3月22日
SS業界研究
エリア特性を生かしたカテゴリー・チェンジ
人的サービスという原点回帰
2016年5月、経済産業省資源エネルギー庁によるSS経営に関する優秀事例100選を見ると、4つの区分で全国のSSの事例が紹介されている。
その4つとは、➀価値提供強化(顧客満足度)、➁競争力強化(油外ビジネス、経費削減・高収益ビジネスモデル)、➂地域貢献強化(社会的課題への取り組み)、➃人材力強化(従業員の定着、採用コスト削減)である。
この調査の背景にあるのはSS業界が抱える課題である。その課題とは、燃料油販売量減少、粗利益減少、従業員確保、そして後継者確保である。特に燃料油販売量減少は存続に直結する。
100選の事例を見ると、油外販売の強化が共通の課題である。それを実現するにはサービス・マインドが前提だと示唆している。コンビニの併設、洗車、コーティングなど、全てにおいてサービス・マインドが核になる。何故なら、どのサービスも機能的なベネフィットは同じであり、コモディティ化し価格競争となる。差別化による生き残りには顧客満足という心理的ベネフィットを重視することになる。
無人化という流れもあるが、サービス業であれば顧客満足(満足を超えて感動が求められる時代であるが)は前提となる。
エリア・マーケティング
資源エネルギー庁では、住民拠点サービスステーションという活動を行っている。これは、自家発電設備を備え、災害などが原因の停電時にも継続して地域の住民の方々に給油できるガソリンスタンドのことをいう。
2021年10月31日時点で、14,356箇所が住民拠点SSになっている。約半数の比率である。
SSを選ぶ理由として、近くにあるというのが大きな理由の一つである。つまり、SSはエリア・マーケティング事業といえる。前回も触れたが、コンビニと比較すると、地域になくてはならない存在としての認知度は高いとはいえない。異なるカテゴリーで認知度を高めていく必要がある。
もっとアイデアを
人的サービスとエリア・マーケティングでは当たり前すぎるように思える。地域の飲食店、郵便局、自転車ショップなど、似たようなビジネスモデルは沢山ある。
一般家庭を除き、急速充電の設備に関して政府は補助を出すが、それでは従来のガソリンスタンドと機能的には変わらないので、収益性への貢献は変化ないだろう。むしろエネルギーの多様化に対応するための設備投資が大きな負担になり、さらに油外ビジネスの重要性が増すだけになるのではないか。
先に紹介した100選を観ると地域の特性を生かしているSSがある。寒冷地といった地理的特性、住民の生活様式に応える配送サービスなどである。
しかし、それだけでは十分とは言えない。EVが普及するとガソリン給油時間より多くの時間を要するだろう。待ち時間は顧客満足を低下させる。よって、スマホで予約するといったサービスも必要かもしれない。予約機能があればクーポンも発行できる。
そして、24時間という特性を活かせば新たな生活様式を地域に提供できるかもしれない。例えば、食である。地域の食材の販売や廃棄ロスに貢献できるだろう。